息子に空手道を教えたいという思いから、近くの小学校をお借りして、平成2年1月より10数名でスタートした「練馬空手道育成会」も今では、「夢道塾」と「明鏡塾」の2つの支部に別れ、会員も併せて600名を越える会に成長しました。
会発足当時の私は、空手道の稽古歴が浅かったので、子供たちの躾と、準備体操を担当し、補佐役として子供たちに接してきました。きちんと正座ができ、挨拶ができる子供になってほしいと願い、また大きな声をしっかり出して、ストレスを発散させようと考えました。父母からもそんな子供に育てて下さいと頼まれたりもしました。だから最初は「声をだせ!」「姿勢を正せ!」そればかりでした。
最初の審査会を迎える頃になると、子供たちは、すっかり私の号令に反応するようになってきました。
また子供たちは、審査の点が良くなるようにと技のことをいろいろ聞いてくるようになりました。子供たちは、たいへん素直です。指導者の教えをよく聞き、そしてよく真似ます。良い形も、悪い形もそのとおりに真似、だんだん指導者のコピーのようになっていきます。
未熟者の私は、たいへん困りました。師がくり返し子供たちに教えていることは、頭では理解できるのですが、いざ自分で動いてみると体が思うように動きません。肩に力が入ってしまったり、腰が回ってしまったり、自分で発している言葉と自分の体の動きがちぐはぐなのです。これでは子供たちに指導は出来ないと思い、私も子供たちと同じように指導者の形を真似て、焦らず稽古を重ねることにしました。子供たちには頭で理解したことを言葉で表現し、直接手を掛けて形を直していくようにしました。