子供に組手を教えるのはたいへん難しいと思います。子供たちは組手を、単なる型の延長のようなとらえ方をします。突き手がこう突くからこう受ける、受け手がこう受けるからこう突くと、それは型どおりに行なうだけで、本当に気迫のこもった組手は無理だと思います。よく「相手の目を見て!」と言いますが、大人ならそのとおり相手が出て来る瞬間に出られるのに、子供たちは馴れ合いで行なってしまいます。息を合わせることができないので、突き手が本気になると受けきれず、突きが入ってしまいます。とても難しいことだと思います。中学生でなかなかうまくいかず、突き手がフェイントをかけたり、受け手が逃げ腰になったりして、組手の本来の意義が理解できません。

 私は平成2年に日本剣道参段を取得しており、何度の試合に出場していますが、初心者の頃の剣道と今では大きな違いがあります。初心者の頃は、チャンチャンバラバラとただがむしゃらに試合を行い、当たった、当たらないで喜んだり、くやしがったりしていました。参段になった頃からの私の勝ち試合は、手数が少なくすべて一発で決めています。決められた時間内に勝敗を決めるため、必ず相手が先に打ってくるので、その瞬間に面を打ち、または胴を打って終わります。空手道の稽古を通して学んだ「後の先」、剣道も空手道も同様で、相手が突くより一瞬早くでなければ倒せないと思います。気持ちの入っていない馴れ合いの組手をしても意味がなく、本気で突こうとする気持ち、本気で受けようとする気持ちがとても大切です。

 私は、師と本気で組手をしようとすると震えることがあります。師の気持ちが充実しているときだと思いますが、怖くて身がすくむのです。しかし、師であっても心の迷いや相手を見下すような心になったときは、不思議に師の動きがとても遅く見えるのです。私が竹刀を持ち、師が私の打ち下ろす竹刀より早く突き、蹴りを出すという稽古をしたことがありました。10回に1回くらいは、私の気が勝り、竹刀で師の頭を打つことがありました。このような稽古は子供たちには到底無理であると確信していますが、型の意味を理解するために基本一本だけは行なっています。



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